シリコンバレーでの学びと、東京への事務所移転のお知らせ

May 20, 2018
MODELMAP
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講座目次

東京への事務所移転のお知らせ

なぜアメリカで始めたか

究極のエンジニア売り手市場

シリコンバレーの良い所

  1. 専門家の密なネットワーク
  2. 「何か」に専念できる環境‍
  3. なぜかやる気がでる

東京にて

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東京への事務所移転のお知らせ

Modelmap Co 代表の川井です。創業してもうすぐ1年が経過しようとしているタイミングですが、この度事務所を東京に移し、日本を拠点として活動をすることに決めました。米国で創業した経緯や、シリコンバレーで失敗して学んだこと、また逆に良かったこと、そして今後東京での活動方針などについてまとめてみたいと思います。


なぜアメリカで始めたか

身も蓋もない言い方かもしれませんが、アメリカで創業した理由を一言で言うと「こっちの方が面白そうだったから」です。しかし、これだけだとあまり説明になっていないため、「なぜ面白そうだと思ったか」という部分について少し補足します。

1. 人生で1度しかない機会
アメリカでは、大学院を卒業すると、1年間(特定の理系分野では最大3年間)米国で労働するビザをほぼ確実に取得することができます(厳密には、学生ビザの延長)。アメリカで労働ビザを取得することはとても大変で、多くの場合は米国企業から専門性の高い職種についてオファーをもらい、移民弁護士を通じて米国移民局(USCIS)へ労働ビザを申請した後、更に抽選で当選しなければなりません。米国の有名大学を卒業し、Google や Apple に内定をもらっていたとしても、抽選で外れれば労働ビザの許可が下りないのです(本当です)。2017年の大統領選でトランプ氏が当選してから、移民に対する政策は益々厳しくなっている中、卒業後に日本へ帰国してしまうと、米国で起業をするという次のチャンスは、人生でなかなか巡ってきません。そういう意味で、「米国で起業しない」という逆の選択肢は、MBAを卒業する頃には自分の中でほぼ無くなっていました。

2. スタートアップ、そして SaaS の中心地
財務モデリングの自動化に対するアイデアについては、MBAの過程で卒業までにほぼ固まっていました。私が在籍していた Carnegie Mellon という大学は、コンピューターに強い大学で、本キャンパスは Pittsburgh という東海岸近くの小さな町にあるのですが、西海岸にも Software Engineering 修士号のキャンパスがありました(なんとNASAの敷地内です)。また、卒業後に米国で起業をするとほぼ決めていた私は、共同創業者を探すために、2017年の初めには西海岸キャンパスへ移籍をして、エンジニアの学生とネットワーキングを始めていました。シリコンバレーは、言わずと知れたスタートアップの聖地であり、また自分が目指している SaaS (Software as a Service) というビジネスの中心地でもあります。UC Berkeley や Stanford といった他のコンピューターに強い大学も近隣にあり、エンジニアの母数が多く、また資金調達がしやすい土地ということもあって、当時は創業するなら西海岸がベストな選択肢に思えました。

3. 巨大な市場
財務モデルの(手作業による)構築は世界中で起きている問題だと考えていますが、本拠地は基本的にアメリカだと考えています。財務モデルの構築はプライマリー投資市場(平たく言えばM&A)で発生する業務であるため、M&A等の資本取引が最も多いアメリカで最も多く行われているのは、ある意味当然だと言えます。世界の投資銀行の利益をランキングで見ても、米系の投資銀行がトップを独占しており、米国の市場でシェアを獲得することができれば、世界中の投資銀行へ展開できる可能性がありました。そういう意味で、極めて競争が激しい分野であり、参入が難しいことは明らかであっても、リスクに見合うだけのリターンは充分にあると考えました。また、Enterprise SaaS として世界で通用しているサービスのほとんど(Salesforce、Tableau、Adobe 等)が米国発祥である、というのも一つの大きな理由でした。


究極のエンジニア売り手市場

米国で一体何をやっていたのか、そして一番苦労したことは何かと言われれば、間違いなく仲間探し(特にエンジニア)です。シリコンバレーはエンジニア供給不足であり、良いエンジニアは高給かつ引っ張りだこだと以前から相当聞いていたため、MBA在学中からかなりの危機感を持って共同創業者 (Co-founder) を探していました。SaaS とはつまるところソフトウェア会社であるため、初期の段階でソフトウェアを作れるエンジニアが初期のステージにいないと開発のスピードを維持できず、スタートアップではなく「ただの中小企業」になってしまうからです(そして多くの場合、現金がショートしてすぐ潰れます)。

リクルーティングを最重要課題とし、色々と試行錯誤しながら模索しましたが、期限までに西海岸で共同創業者のエンジニアを見つけることはできませんでした。リクルーティングについては、私のネットワーキング能力や、コミュニケーション力、ビジョンを伝える力や、運を含めた人間力が足りなかったこと(要は実力不足)が基本的に全てだと思っていますが、ややテクニカルな要因で苦労したことも事実なので、少し自分なりに要因を分析してみます。


フロントエンド重視の実装
実現したいこと自体の技術的難度は(概念的には)そこまで難しくなかったのですが、実際に実装を行うにはかなり困難なソフトウェアでした。MVP (必要不可欠な機能のみの製品) として、フロントエンド側の柔軟な描画と、エクセルとの連携、という2点がどうしても必要であり、設計や実装において色々な制約を受けました。多くの SaaS プロダクトの場合、クラウド型のサービスとしてブラウザでほぼ完結していることが多く、PHP か Ruby on Rails で静的なページの切替を行っていくものが多いと思いますが、エクセルから数式を解析(パース)して、樹形図上に表示した上でヌルヌル動かす、となると実装の選択肢が非常に限られていたため大変でした。フロントエンド側の実装がメインであることから、当初は JS React をベースとして考えており、JS ライブラリーの中にもエクセルのパーサーとして利用できるものがあったため、JS を主軸として考えていました。しかし、React が比較的新しい技術であることに加えて、React が扱えるフロントエンドエンジニアは貴重であることもあり、なかなかエンジニアに巡り合うことができませんでした。

.Net Framework & C# を敢えて選択
当時、MVP以前のデモ用プロダクトをサンフランシスコ本社のソフトウェア委託会社に構築を依頼していたのですが、途中で JS のみであるとエクセル上の数式を解析する上で一部の機能が実装できず、結局 .Net Framework を背後で動かさなければならないという事実が判明します。MVPで仮説の検証を行う上でどうしても必要な機能だと考えていたため、最終的には .Net Framework を選択し、純粋なエクセルの COM Add-in として開発を始めたことで、フロントエンド側も Winform を用いるという苦渋の決断をしました。この選択は、実際のユーザーへβテストした結果MVPの方針として間違っていなかったと確信していますが、リクルーティングは更に困難になりました。現在の開発トレンドは、フロントエンドを React/Redux で構築することが主流であり、Winform や WPF を未だ使っているエンジニアは稀で、西海岸ではその傾向が特に顕著でした。.Net & C# についても、Miscoroft 特有の言語であることから、どちらかと言えば嫌われる傾向にあり、エクセルとの連携とも合わせて「流行りでない」開発方針でした。

高い家賃と高い給与水準
Modelmap創業ストーリーにて、「世界一高い」と書きましたが、それは少し大げさでした。実際は香港やロンドンの方が高いと思うのですが、それでもワンルーム20万円からの家賃は高いです。2018年は米国景気上昇と円安も相まって、Mountain ViewからSunnyvale、Cupertino 周辺は 1LDK だと30万円、2LDK だと40万円ぐらいの水準にまで上昇しています。賃料がとても高いので、これらのエリアで採用を試みると、スタートアップと言えども高い給与水準を提示しなければなりません。一般的に、3ヵ月 - 6ヵ月間のプログラミングスクールを卒業したエンジニアの給与水準は800万円 - 1,000万円で、Google や Apple のエンジニアに至っては1,200万円 - 2,000万円が相場だと聞いています。福利厚生が手厚く、ブランドもある大企業に勤めるエンジニアにとっては、とても良い環境だと思いますが、スタートアップがこれらの給与で採用をすると、現金がすごい勢いで燃えてしまう上に、高い給与の人を払えば良い人が採用できるか、と言うとそれも確実ではないようです。例えば、友人のスタートアップは、1,800万円弱を払ってCTOを雇用した結果、開発スケジュールを大幅に遅延させた挙句、想定予算の2倍のコストを消費し、半年間で会社を去ってもらったとのことでした。起業家精神のあるエンジニアは大企業に勤めながら自分でサービスを始めてしまうことも多いので、彼らを誘惑するには明確なビジョンと人間力が必要だと、改めて強く感じました。


上記3点を踏まえた学びとして、今後西海岸で起業を検討している人は、以下の方針をお勧めします。1. 現地でのリクルーティングが壮絶なため西海岸に来る前に Technical Co-founder または Business Co-founder を見つけておく、2. 出来れば MVP でトラクション獲得後、資金調達のタイミングで来る、3. ネットワーキングには時間がかかるので、Accelerator のプログラムに入るか、現地の大企業とパートナーシップを早めに結ぶ。もちろん、西海岸で出会ったエンジニアを熱意で口説いて、多額の資金調達をしている起業家も身近にいますし、上記3つの方針でなくとも成功する道は起業家の数だけあると思いますので、これから挑戦する人は、上記の例を一つの参考として、自分の信じた道を進んでみて下さい。


<開発中の Modelmap Analyzer、エクセル上の数式から計算過程を樹形図として描画した画面。最終的に .Net Framework を使用して COM Add-in として C# で開発。フロントエンドについては一部制約があるものの Winform で MVP としての最小限の機能を実装。>


シリコンバレーの良い所

これまではリクルーティングを中心に、現地で苦労したことをお話しましたが、自分が感じたシリコンバレーならではの良い点をいくつか整理してみたいと思います。

1. 専門家の密なネットワーク

西海岸はエンジニアの母数が多く、人の紹介で新しい人と出会うことが日常茶飯事であるため、どのようなサービスをどう構築しているか、といった最新の開発事情をすぐにリサーチできたのは助かりました。「SF日本語エンジニアの飲み会」といった日本人のコミュニティや、こちらの大学に在籍している日本人の学生も多数いるため、「どういうものを作りたいか」さえ決まっていれば、紹介を経て詳しい人に話を聞くことは、とても簡単でした。自分の場合、結局サンフランシスコの企業へ100万円払って Javascript での開発を進めようとした結果、途中でプロジェクトが炎上し方向転換を余儀なくされたため、全く無傷ではなかったのですが、それでも専門家の人たちの助言を経て早い段階で .Net Framework に舵を切れたことは良かったと思います。逆にあのまま React で開発を続けていたらどうなっていたことやら...。

2. 「何か」に専念できる環境

Pittsburgh から引っ越してくる前は、South Bay か San Francisco で住む場所をどちらにしようか迷っていました。突如、「そうだ、Y Combinator と 500 Start-up の事務所に近い方にしよう!」と根拠のない決め手で South Bay に決定しましたが、この選択は英断だったと思います。South Bay は San Francisco より賃料が高くない上に、とても住環境が良いです。具体的には、野菜や果物がとても安い。山盛りイチゴが1パック2ドルで売られていたり、肉 1kg が10ドルで売られていたりします。しかもオーガニックで美味しい。また、South Bay は緑も多く、道を歩いていても街路樹が絶やさず植えられていたり、公園が沢山ある上に晴れてる日が多いです。殆どの移動は車ですが、カフェの数が多く駐車場も広いので近距離の移動で渋滞したり、カフェが混雑で並んだり、なんてことは一度もありません。とにかく住環境を含め空間にゆとりがあるため作業に集中できます。リクルーティングが完了していて、ネットワーキングをあまり必要としないフェーズであり、ひたすら開発やデザインを行うには最適の場所だと思いました。逆にネットワーキングに集中したいのであれば、都会のストレスを覚悟してサンフランシスコの方が良いのかもしれません。

3. なぜかやる気がでる

これはうまく言い表せないのですが、シリコンバレーに住んでいると何故かやる気が出てくる気がします。例えば、大学からのメーリングリストに告知があり、Eric Schmit (Googleの元CEO、現会長) が大学のキャンパスまで話に来るというメールが届いたことがありました。会場まで足を運んでみると、小さな教室にわずか50人程度の生徒しかおらず 、本人との距離わずか 3m の距離で話を聞くことができたり、何気なく入ったカフェで 500 Start-up のパートナーがサンダルでコーヒーを飲んでいたりします。同じコワーキングスペースで働いていたチームが数億円の資金調達をしたり、また起業家の仲間がサービスを発表したりする中で、何かを成し遂げた人、また成し遂げようとしている人達の輪の中に居ると、何故か自分も何かが出来そうな気になってくるものなのかもしれません。


<マンゴーがなんと 4 個で $1。ちょっと青いけれど、部屋で日光にあてておくと追熟して赤くなる。マンゴーごとに当たり外れがあり、外れのマンゴーは繊維が多くて筋っぽいが、スムージーにして飲むと滑らかになってとても美味しい。>


<Carnegie Mellon 大学のシリコンバレーキャンパスで講演する Eric(近い!)。講演後、校舎の中で 1人コーヒーを飲んでいたけれど、勇気が出ずに話しかけられなかった日を今でも悔やむ。>

東京にて

東京でまず一番初めに行うことは、引き続き仲間探しです。まだ事務所の場所も決めていませんが、入社希望の人と相談して決めようと思っています。コンサルティング会社へのβテストも概ね完了し、ソフトウェアのリリースに向けて開発の最終段階に入っていますが、金融業界の GitHub を構築するためにまだまだやるべきことは山積みです。

改めて、東京へ事務所を移すにあたり、一緒に事業を進めてくれる人を全力で募集しています。年齢や性別、国籍などは問わず、異なったものを受け入れられる人、これまで誰かがやらなかったことを自分でやったことがある人、そしてまだ誰もやったことのないことをやってみたい人、本気で世界を変えたいと一度でも思ったことのある人は、是非一度話を聞きにきて下さい!

2018年5月下旬 John

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