ブレークファンディングコスト (Break Funding Cost)とは

July 29, 2019
Finance
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用語解説目次

ブレークファンディングコストとは

  • 考察: 期限前返済費用 =ブレークファンディングコストか

ブレークファンディングコストの記述例

ブレークファンディングコストのプロジェクトファイナンス利用時における事例

  • 考察: 再運用利回りを実務的にどう取得するか
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ブレークファンディングコストとは

プロジェクトファイナンスのみならず、事業者が長期の事業性資金の借入を実行する段階で、借入れ期間の途中で借入金の全額返済を行う際に、銀行に対して支払わなくてはならない費用を期限前弁済手数料と呼ぶ。なぜこのような費用が発生するかと言うと、銀行の基本的なビジネスモデルは、調達金利 (預金金利や銀行間市場における金利等、銀行が資金を調達する金利) と貸出金利 (銀行が顧客に資金を貸すことで得られる金利) の金利の差で利益を得ている。例えば、銀行が 1 億円を 1% の金利で外部から調達し、5% で顧客へ貸し付けられれば、銀行は 1億円 x 4% = 400 万円の利益を得ることができる。しかし、銀行が資金を当初の予定よりも前倒しで返済をされてしまうと、あらかじめ見込んでいた金利収入が減ってしまう。そのため契約で定められた時点よりも早い段階で全額返済を行う場合、「期限前弁済手数料」という実質的にペナルティに相当する手数料の支払を求める事が一般的だ。例えば、元本 1 億円、利息年率 5%、貸付期間 4 年間の融資契約が締結され、貸出実行後 2 年目で借入人が借入残高を全額返済したと仮定する。このような場面において支払われる期限前弁済手数料としては、ブレークファンディングコストとプリペイメントフィーの 2 種類が想定される。

ブレークファンディングコスト

ブレークファンディングコストとは、借入金の期限前返済をした際に、再運用利率が基準金利を下回る場合に生じる清算金を指す。銀行から見て、もともとの融資契約の条件のもとで得る見込みだった利息収益と比べて、早期弁済された資金を別の方法で再運用する場合の利息収益の方が低いと見積もられる場合に発生するコストをブレークファンディングコストと呼ぶ。固定金利の融資の場合、期限前返済実行日の翌日から返済期日までの期間の実日数につき年 365 日の日割計算により算出され、変動金利の融資の場合は期限前弁済の翌日から次回の利払い日までの日数にて計算されることになる。数式にすると以下のように記載できる。

尚、再運用利率とは、残存契約期間にわたり、東京インターバンク市場(短期金融市場)で残存元本を運用すると仮定した場合の利率が一般的に用いられる。

プリペイメントフィー

上記計算方法により算出されるブレークファンディングコストに代わり又はこれに加えて、早期弁済を行う借入金の元本残高に一定の料率を乗じた金額等の支払いを義務付ける契約も存在し、プリペイメントフィーと呼ばれる。このような規定は、主に同じ利回りにおける再運用先を確保することが困難な事案(買収ファイナンス、プロジェクトファイナンス、不動産ノンリコースローン等)で見られることが多い。(*1)

考察

日本語の「期限前弁済費用」は、金利差による貸し手の運用損失や、単純な罰金としてのプリペイメントフィーの両方を含んだ包括的な費用と言える。他方、英語のブレークファンディングコスト (Break Funding Cost) とは、Bloomberg の関数定義や HSBC の資料(2)によれば、金利低下による利回り差額の損失のみを指す場合が多いと言える。

ブレークファンディングコストの記述例

記述例①

日本政策金融公庫 Website 5年経過ごと金利見直し制度 より引用 (*3)

制度の概要
平成8年7月1日以降の契約による新規ご融資について、公庫の承諾を受けて繰上償還をされる場合には、所定の算式による期限前弁済手数料をお支払いいただきます。(公庫の承諾のない場合、期限前弁済手数料をお支払いいただけない場合には、繰上償還はできませんので、ご注意ください。)

期限前弁済手数料の基本算式 (平成20年8月18日から) 
期限前弁済手数料 = 繰上償還額の約定期限までの平均残高 × 公庫が定める金利の差※ × 約定期限までの残期間
(当算式は簡略式です。実際の金額は貸付契約の特約条項に基づき計算します。)
※契約時における「財政融資資金貸付金利を基準として公庫が定める利率」と弁済時における「財政融資資金貸付金利を基準として公庫が定める利率」の差とします。

記述例②

日本リート投資法人 借入金の一部期限前返済に関するお知らせ 平成27年3月20日より引用 (*4)

本投資法人は、本期限前返済にあたり、期限前返済費用としてブレークファンディングコストを支払います。
「ブレークファンディングコスト」とは、借入れの期限前返済が行われ、かつ、再運用利率が基準金利を下回る場合において、①当該期限前返済日において期限前返済を行う元本金額に、②基準金利と再運用利率の差を乗じ、③当該期限前返済日から次回の利払日までの期間の実日数につき年365日の日割計算により算出した金額をいいます。
「基準金利」とは、各利払日の直前の利払日の2営業日前における全銀協1か月日本円TIBORであり、本件期限前返済費用(ブレークファンディングコスト)の算出において適用される利率は0.13000%です。
「再運用利率」とは、当該返済金額を当該期限前返済日から次回の利払日までの期間にわたって東京インターバンク市場等で再運用すると仮定し合理的に決定される利率です。

                             

 記述例③

オリックス不動産投資法人 借入金の期限前弁済に関するお知らせ 2015年12月7日より引用 (*5)

「ブレークファンディングコスト」とは、既存借入の期限前弁済が行われ、かつ、再運用利率が基準金利を下回る場合において、①当該期限前弁済日において期限前弁済に係る元本金額に、②基準金利と再運用利率の差を乗じ、③残存期間の実日数につき年 365 日の日割計算により算出した金額をいいます。
「再運用利率」とは、当該弁済金額を残存期間にわたって東京インターバンク市場等で再運用すると仮定し合理的に決定される利率です。

ブレークファンディングコストのプロジェクトファイナンス利用時における事例

国内で太陽光発電プロジェクト向けにSPCを設立し、ノンリコースのプロジェクトファイナンス100億円を固定金利2%、返済期間18年、元利均等返済でアレンジした。発電所が完工してから1年後、実績発電量が出そろった所で利益を確定させるべく、国内投資会社にSPCの持分100%を売却する事としたと仮定する。これに伴い、譲渡日時点でのSPCのローン残高97億円も併せて引き渡される。持分を買い受ける投資会社は、買い取ったSPCから発電所資産を事業譲渡の形で自社が運営する上場インフラファンドに組み込むとする。この時、SPC名義でローンを借り入れている以上、ここから資産を切り出す際に、このローンを期限前弁済する必要が生じる。期限前弁済に必要となるブレークファンディングコストの条項が以下と仮定する。

  • ブレークファンディングコストとは、期限前返済日において、再運用利率が本契約における適用利率をした回る場合に、期限前返済を行う元本金額に、適用金利と再運用利率の差を乗じ、当該期限前返済日から次回の利払日までの期間の実日数につき年365日の日割計算により算出した金額とする
  • 「再運用利率」とは、当該返済金額を当該期限前返済日から残存する期間にわたって東京インターバンク市場等で再運用すると仮定し合理的に決定される利率とする。ここでは、再運用利率を1.99%とする。

上記の例では、融資残高 x (適用利率 2.00 % - 再運用利率 1.99% ) x 残存期間 17 年 = 約 0.082 億円がブレークファンディングコストとなる。融資残高については契約に基づいた返済スケジュールに沿って漸減していくものを使用し、契約時に想定される融資残高にそれぞれの利率を乗じて想定される利息収益を算出する。このコストは、当該資産を買収する買手投資家が本取引に要するトランザクションコストの一部として、発生を見込んでおくべき費用となる。(通常、半期毎の返済が一般的と想定するが、以下は簡略化のため、年次での元利返済スケジュールと仮定する)

考察: 再運用利回りを実務的にどう取得するか

上述のように、ブレークファンディングコストの具体的な規定の文言例を参照すると、「「再運用利率」とは、当該弁済金額を残存期間にわたって東京インターバンク市場等で再運用すると仮定し合理的に決定される利率です。」という趣旨の記載であることが一般的だ。変動金利融資の場合は、早期弁済の実行日から次回の利払い日までの期間なので、長くても6か月間の東京インターバンク市場の金利を参照の上、再運用利率が求まる一方で、一般的なプロジェクトファイナンスなど、固定金利で10年を超える融資期間が残存する場合の再運用利率はどのように求めるのか。東京インターバンク市場の金利(*6)は、12か月までの金利しかないが、この金利を以て毎年借り換えながら10回以上ローリングして、10年以上再運用するのか。しかし、その場合、12か月のTIBORの金利は約0.13% (2019年7月26日時点)(*6)である。約定していた固定金利とこのTIBOR短期レートの差は、現実的に考えてスプレッドが大きすぎる可能性が高いので、期限前弁済実行時点でのレートで固定金利と変動金利のスワップを組んで、また残期間にわたって固定金利で貸し出す場合の金利とのスプレッドとして解釈されるのが実務上では一般的だと想定される。

出典)
(*1) 金融法委員会 平成23年1月10日
  http://www.flb.gr.jp/jdoc/publication35-j.pdf
(*2) HSBC
  https://www.hsbc.com.au/content/dam/hsbc/au/docs/pdf/homeloans-fixed-rate-break-cost.pdf
(*3) 日本政策金融公庫
  https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/5years.html
(*4) 日本リート投資法人 借入金の一部期限前返済に関するお知らせ 平成27年3月20日
  http://www.nippon-reit.com/file/news-d2fadd65fe41b08c967b5d373c5c05a150583fd.pdf
(*5) オリックス不動産投資法人 借入金の期限前弁済に関するお知らせ 2015年12月7日
  https://www.orixjreit.com/file/news-d2dc302f2fa896c4ec7efd55fa49261aae3e6889.pdf
(*6) 東京インターバンク市場 2019年7月26日
  http://www.jbatibor.or.jp/rate/pdf/JAPANESEYENTIBOR190726.pdf
(*7) 上級財務モデリング講座「金利スワップとは」
  https://www.financial-modelling.jp/dictionary-posts/interest-swap
(*8) 東京インターバンク市場 履歴
  http://www.jbatibor.or.jp/rate/pdf/JAPANESEYEN2015.pdf
(*9) 三井住友信託銀行 東京円金利スワップレート
  https://fund.smtb.jp/smtb/qsearch.exe?F=mkt_swprate_detail&KEY1=5Y&ctype=4
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